先日書店の新書コーナーで『
自分の心を見つける ゲーテの言葉』(永岡書店)という本を見つけたので、購入してみました。他にもゲーテの格言を利用した本が平積みされてましたが、とりあえずということで。別に、ゲーテと私の出会いは私が中学の頃まで遡るので、なんら新しいことはないのですが、この本を手にした人はどのようにゲーテと出会うのか、が気になりまして。
本の内容はといいますと、最初に約30Pに渡りゲーテの人生がザックリとカラーページで掲載されており、短い割にはポイントを抑えてるので可もなく不可もなく・・・あえていうなら白黒にして値段を下げて欲しかったくらいです。それ以降の内容は、右ページにゲーテの格言と引用元が、左ページには編集者の方々の『
格言の解釈とありがたい激励のおことば』が掲載されてます。若造なら『
いちいち言われなくても分かってるよ』と反発したくなるような、ことばかり書かれているので正直、疲れます。さらに先ほど述べた右ページのゲーテの格言の
右横に、私たちに分かりやすい言葉に格言が書き換えられた文が載ってます。ご丁寧だこと。分かりやすく、例をあげましょう。
p.94
ゲーテ
:『美しいものは、世界で孤立していることがあるものだ』
右横:
孤立した美しいもの
p.102
ゲーテ
:『自然は過ちを気にしない。自然自身はどういう結果に生じるかに関係なく、ただ永久に過つことなく行動するだけだ。』
右横:
自然を過ちを気にしない
・・・なんで繰り返すんですか?
さらに他には・・・
p.58
ゲーテ
:『天才が天才としてなすことはすべて無意識になされる』
右横
:予測は段取りは天才には必要ない?!
・・・「?!」って。確信持てないなら書かないでください。
つか、このシラー宛の手紙からの抜粋は本の意向とズレてると思う。
こんな具合で、太字で書かれた右横の文字が先に目が入ってしまいがちで、
すごく気が散ります。さらに左ページの文章も、ゲーテの言葉を解釈していくという読者の貴重な過程が、バッサリ削がれてしまう文になっており、さらには
余計な先入観を与えるという
逆効果まであります。このような丁寧な説明がないと、翻訳文は難しいことは難しいのですが、その
「考える、自分なりに理解する」という機会こそが、ゲーテが意図的に作品に格言を盛り込み、後世に残してくれた財産なのでは・・・と思います。まぁ、この本はゲーテの言葉を上手に利用した
自己啓発本みたいなもんなんでしょうけど。
確かにゲーテは、作品の中に多く格言を残しており、短い言葉に深い意味を込めることを得意とし、重要だと思っていたでしょう。でも、ファウストの放つ言葉は前後の過程があってこそ説得力を増すものだし、なんだかこういう
オイシイどこ取りなように見えて、
重要な栄養素が抜けちゃってる本は好きになれません。批判するために買ってる私もどうかと思うけど(笑) あっ、あともうちょっとシュタイン夫人に宛てた手紙の抜粋があったら良いな―と。とりあえず、同じようなゲーテの格言集をお探しならまず新潮文庫から出ている「
ゲーテ格言集」をまず読んでから、ちょっと自分の解釈に悩んだときにこの本を補足として手に取るには問題ないと思います。ゲーテの理想に則してるかどうかは別として。(私は毎日持ち歩いてるのでボロボロに・・・お気に入りの格言をその日その日で見つけるのも面白いですよ^^)
なぜか表紙にドイツ語で「もっと光を!」だなんて書いてありんす。まぁ、ゲーテの遺言ですけど、ゲーテが見たらちょっと照れくさくなるんじゃないのかな―(笑)
ちなみに、私は寝言で「ポチョムキン!」と叫んだことがあるそうです。好きな映画だけどさ・・・(笑)
PR